第00019話
絵描き・ペインター 中川 和寿さん
- 絵描き・ペインター 中川 和寿さん
太白区在住。宮城県宮城野高等学校 美術科卒。宮城教育大学 芸術文化学科油絵専攻卒。大学の広報課やデザイン会社勤務を経て、絵描き・ペインターとして独立。中学生から油絵とエレキギターをはじめ、現在も絵描き・バンドマンとして活動を続ける。全国で個展・壁画制作やワークショップを行うほか『ARABAKI ROCK FEST.』をはじめとする音楽フェスにも、ステージ装飾・アートブース監修などで参加。graniph award2013 銀賞受賞。2019年に画業20周年を迎え、2022年8月には自身のギャラリー&オープンアトリエ「OTOTOE」をオープン。作品制作や展示、グッズ販売のほかワークショップの開催も予定している。
[URL] https://kazutoshinakagawa.jimdofree.com/
[WEB SHOP] https://peliot.theshop.jp/
- 空想の原風景を旅する、エンターテイナーの備忘録
- -私が中川さんの作品をはじめて拝見したのは、『ARABAKI ROCK FEST.』の会場でした!その頃から中川さんはどんな方なのか気になっていたので、『OTOTOE』に訪問できてソワソワしています。(笑)
オープンして5ヶ月ほど経ちますが、心境の変化はありましたか? -
画業を続けていく気持ちがより強くなりましたね。
子どもの頃から絵を描くことは好きだったんですけど、高校生の頃からバンド活動もはじめて、大学卒業時は「バンドでやっていく」という気持ちのほうが大きくなっていました。
でも社会人になって20代前半くらいから、作家活動をしていこうと本格始動。ここをオープンするまでは自宅で制作していたので、常に作品を鑑てもらえる環境がなかったり、実家の部屋は作品の置き場がなくなってしまう状態に。親からは「何とかしろ」と言われていたんです。(笑)
そんなタイミングでお世話になっていたデザイン事務所が移転され、私が引き継がせていただけることになり、アトリエを構えることができました。
アトリエ&ギャラリー『OTOTOE』内
- -バンド活動も続けられているんですね。それで、アトリエの名前が「音」と「絵」!ぴったりのネーミング。
そして、音楽フェスへの参加やアーティストとのライブペイントで日本各地を回られている中川さん。そんな旅人のような自由さや軽快感は、ご自身のことを画家ではなく「絵描き・ペインター」とされているところからも、ひしひしと感じます。 - 僕は並行して音楽も続けているので、エンターテイメントとしての見せ方は意識しています。例えばライブペイントのときは、曲が終わると同時に絵が完成しているとか、「ひっくり返したら、実はこういう絵でした」とギミックを入れることもしばしば。
また、日々アトリエで孤独に描いた絵を鑑てもらうことと、エンターテインメントとして作品を観てもらうことで、僕自身のバランスを取っているんでしょうね。
画業という点では、個展を開いて絵を売ることだけにこだわっていないです。イラストやその関連グッズ、それに伴うデザイン業も一貫して行っています。もはや、よろず屋ですね。(笑)
僕はいまでこそ『whale song(クジラの唄)』シリーズで周知していただいていますが、自分のテーマ・拠り所というか「いまはこれが描きたい!」みたいな気持ちの切り替えが必要だと思っています。
絵だけで食べていけたらそれに越したことはないかもしれないけど、ライスワーク(食べるための仕事)はいろいろあっていいと思います。ライフワーク(自分のやりたいことをするためのお金を稼ぐ仕事)じゃないですけど、それをベースにバランスよく両輪で回していく生き方は時代に合っている気がします。
ライブペイントの作品群(アクリル画)
- -『whale song』シリーズを描き続けて10年。とても魅力的な作品で、私も大好きです。
しかし、ひとつのモチーフを描き続けるのはなかなか難しいことだと思います。中川さんはなぜ、描き続けていられるのでしょうか? - なぜでしょうね。でもふとしたことで、違うモチーフを描きたいとなれば、自然とクジラを描く回数は減っていくと思います。あまり1つのモチーフだけに固執しすぎずにいたいです。
2020年からは新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、インプットする時間がなくなっている気がします。「旅に出る」じゃないですけど、そろそろ新しい刺激との出会いがほしいところ。
やり続けることが、一番難しいじゃないですか。僕に絵の才能があるのかは、わからないけど「やり続ける才能はどうやらあったんだな」と最近感じています。ラッキーももちろんありつつ、10年続けられたらどうにかなると思うんですよね。なにごとも。
- -やり続けることで、ザトウクジラと旅をする空想の原風景がどんどん広がっていきそうですね。
-
ザトウクジラは10年前にテレビではじめて見たんですけど、海の中で空を飛んでいるかのように羽ばたく姿が面白くて、それから取り憑かれたかのように描いています。(笑)
同時期に、沖縄でホエールウォッチングを体験する機会もあり尚更でしたね。とてつもなく大きい野生の生き物を普段見ることはないですから、実際はちょっと怖いんですよ。すごく惹かれているけど恐れ多いというか、「神聖」な感じがしました。
だから必ずしも仲良くなりたいとか、理解したいというわけではないんです。でも、子育てのために南から北へ回遊して一生を旅したり、唄で会話する習性に感動を覚えました。
それは僕の生き方とも相通じるものがあったから、描きたくなったんでしょうね。
- -中川さんが思い描く空想の原風景で、「ザトウクジラ」が旅仲間に!
中川さんは、いつ頃から風景画を描かれているんですか?そして、風景画の面白さはどんなところでしょうか。 - はじめて描いた風景画は、クロード・モネ(※1)の作品模写でした。中学生の時なので、風景画家として教科書に載っている作品がそれしかなかったというか、選択肢がなかったというか。(笑)
風景画の面白さは、画面に線を1本描けば風景になるところです。地平線や道になったり、画面の中に自分で空間をつくり出せることが面白くて描き続けていますね。
あと動物や自然、町並みのシルエットもよく描いているので、もともと僕の画風のルーツはモネを代表とする印象派より少し前のバルビゾン派(※2)に近いです。彼らは屋外に出て風景を描きはじめた先人たちで、すごく影響を受けていると思います。
高校生のときは森の絵を描いたり、大学生のときはちょっと抽象的なもの描いたりしていました。だからいろいろ描いてきましたね。学生の頃は油絵を多く描いていたんですが、乾くまで結構時間がかかるじゃないですか。だから今は、個展の作品をつくる時間があるときだけ油絵を描いています。
(※1)印象派を代表するフランス画家。代表作『印象・日の出』。
(※2) 1830年から1870年頃にかけて、フランスで発生した絵画の一派。代表作品には、ミレーの『落穂拾い』などがある。
- -子どもの頃に思い描いていた、大人像になれていますか?
- 想像していた通りです。でも、将来なりたいものは違いました。
小学生のときは怪獣映画が好きだったので、映画監督になりたかったんですよ。だから東宝に就職して、ゴジラ映画を撮ろうとしていました。
いまでも好きなので、今後いきなり撮りはじめるかも。ゴジラvsザトウクジラ。(笑)
でも実際は高校1年生のときには、いまと変わらない生活スタイルになっていましたよ。高校には部活動がない代わりに、自由に好きなことができるサークルがあったので、絵を描いたり文化祭で展示やバンドでライブをしたり。
そのまま20年、現在に至ります。
アトリエには、ザトウクジラのグッズやお洋服も展示・販売していました!
- -作家活動のほかに、人生の目標がありましたら教えてください!また、このアトリエが子どもたちにとって、どんな存在であってほしいですか?
- 子どもの頃、皆さんの近所にもいたと思うのですが「この人は何をして食べているんだろう」みたいな、よくわかんないおっさんになりたいと思っていた時期もありました。(笑)
だから、順調にその目標へ近づいている気がします。
親御さんは「あんまり仲良くしちゃ駄目よ」というけど、でも話が面白いから子どもたちはこっそり会いにいきたくなる。
この場所もそういう「たまり場」になれればいいな、と思っています。
- -ショップ情報
- アトリエ&ギャラリー『OTOTOE -NAKAGAWA KAZUTOSHI STUDIO-』
[営業時間] 13:00-18:00(不定休/HPカレンダー参照)
[住所] 仙台市青葉区一番町1-5-31 MIGNON一番町4F-B
[URL] https://kazutoshinakagawa.jimdofree.com/
[WEB SHOP] https://peliot.theshop.jp/
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