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286の人々

第0005話
そば処「登喜和」若旦那 小川 浩二さん

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小川 浩二
1987年生まれ。埼玉県出身(長町在住)。創業37年のそば処『登喜和』若旦那/ダンサー。東京のダンススクール専門学校で、HIPHOPを中心に様々なジャンルを習いはじめる。学校の事務員とダンススタジオ勤務を経て、2017年に仙台へ移住してそば屋に転職。
https://sobadokorotokiwa.wixsite.com/sobadokoro-tokiwa
ダンスとおそばを自らの武器に「楽しい」を発信し続けていらっしゃる、そば処『登喜和』若旦那。これまでは若い世代を中心に、創作そばでおそばの面白さを伝えてこられました。そんな若旦那がこれから目指すものは、誰もが気軽に立ち寄れる「街の集会場」!

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-おそば屋さんになる前は、ダンサーをされていたんですよね!
私がダンスに興味を持ったのは18歳のときです。TVや駅前で練習している方のブレイクダンスやアニメーションダンスなどに興味を持ち、衝撃を受けてはじめました。
ハマりやすい性格のため「とにかくダンスが好き。上手くなりたい!」という勢いだけで、東京の専門学校へ。卒業後は、その学校の事務職に就きました。
-専門学校を卒業後、しばらくはダンスに携わるお仕事を?
そうですね。事務職は4年ぐらいやらせていただきました。事務職を辞めたあとは、ダンススタジオに就職して、いろんな人との出会いがあり、技術を魅せる音楽やダンスから表現する方にシフトしていきました。
その後は、結婚や子育てのことなどを考えて、奥さんの実家がある仙台へ移住することになりました。奥さんの実家は30年以上続くそば屋で「ちょうど人が足りていないから働いてみないか」という話があったんです。そのとき直感で「そば職人って、かっこいいな」と思い、27歳から新たな挑戦をはじめました。超初心者で料理の道に入ったけど「別に死ぬわけじゃないし、やってみっか」とはじめて、7年経ちました。

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-そば打ちのどんなところに惹かれたのですか?全く別の業種ですよね。
そば打ちは結構、ダンスに近い気がします。リズムというか、やっぱり身体で覚えるんですよね。身体と手の感覚が大切だから、数をこなさないといけません。
当店のそばには、手打ちと機械打ちの2種類あるんですが、全て感覚で学ぶしかありませんでした。その日の湿度とか加水量などのデータをとって、経験値を残して少しずつ理解を深めてきた感じですね。今度はその感覚とデータをいかに次世代へ伝えていくかが、これから私が担う役割だと思っています。
最近は、メニューの考案とSNS発信を任せてもらっているので、毎日楽しいですよ。

-私も子どもの頃から足を運んでいたおそば屋さんだったので「若旦那が来られてから、お店の雰囲気変わったな」と思っていました。
最初この店にきたとき、正直ちょっと敷居が高いイメージがありました。「一見さん、お断り」みたいな雰囲気があって、はじめての人が入りづらい感じがあったんです。だから最初から「この雰囲気をぶち壊さないと、この業界自体が廃れていくだけなんじゃないか」という危機感を持っていました。
-若旦那の発信力、見習いたいです。とてもマメでいらっしゃいますよね。
仕事をしたくないという一心で、好きなことだけをやり続けていたらマメになりました。(笑) 好きなことを伸ばしまくっていたら、私の好きなことにお客さんが共感して喜んでくれたんです。そのお陰で、いろいろ続けられているような気がします。
それに、毎週メニューを考えたりするのもプレッシャーじゃなくて、1週間を楽しむ一つの手段になっているんです。それがあるから、1週間を楽しめるみたいなところまで自分を持ってきた感じ。

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-メニュー開発などは、いつ頃から任せてもらっているんですか?
だいたい4年前ぐらいから任せてもらっています。そもそも開発をはじめたのは、まずは『そば』を若い世代の方や普段召し上がらない方に興味を持っていただけたらと思い、そのきっかけ作りをしたかったんです。取っ掛りとしては、創作そばをやりたくて「和洋中折衷いろんな要素を取り入れた、おそばがあってもいいんじゃないか」と思いました。
メニュー開発については社長がOKをくれたからこそ、いろいろ試行錯誤できているので感謝しています。
創作そばは、トマト丸々使って、バジルのソースをかけた『トマトバジルそば』や『カボチャのポタージュつけそば』など考案しつつ、基本的には店のものや出汁を使うことをルールにして作っていました。メディアなどで話題にもなったし、楽しんでもらえたので本当にうれしかったです。
でも2021年あたりから、SNSなどでうちの店を知ってくれた若い世代の人たちや遠方からのお客さんがどんどん増えてきました。少しずつですが「今まで以上におそばを楽しんでもらえるようになったんだな」と目標を達成した感じもあり、本来のそば屋スタイルを見直しつつ、本当に私がやりたい事だったり「この先、ずっと残していけたらいい」と思うものを追求し、作るようになりました。

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面白いテイクアウト商品も充実

-第一目標を達成されたんですね。次に目指したいことは決まっていますか?
私が本当に目指しているのは「街の集会場」のようなおそば屋さん。
店内で、近所のおんちゃんが昼間からお酒飲んでいたり、おばちゃんたちがめっちゃ駄弁っているところに「コロッケと唐揚げ、ちょうだい!」と家族や恋人だったり、仲間や学校終わりの子どもたちが、通ってくれるお店にしたいんです。だから食事に限らず、いろんな人たちが常にミックスして居られる場所になることが、ゴールかなと思っています。
また、専門性を重視する現代の風潮を逆行していく必要性も感じています。当店のような個人店は難しい時代になってきていているし、そういう心を許せるお店が誰にでも一件はあると思うんですよね。それがそば屋だったら、めっちゃ面白いじゃないですか!
だから私は、そば屋の枠に囚われないそば屋の若旦那になります。そんなに甘くないとは思うんですけど、やっぱりそうなることが私自身にとって「絶対に楽しいこと」だから、お客さんにも楽しんでもらえたら一番いいっすよね。

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そば屋の唐揚げ 定番の味

-新しい試みをどんどん発信されている若旦那ですが、その原動力になっているものは?
真新しいものではなく、経験過程で得たものを落とし込んでいく感覚で続けています。そのほうが絶対続くし、「味が出るかな」って。明日にでもできることをバンバン取り掛かっていくことが、性に合っているんだと思います。
最近では、パフォーマンスの動画や写真をわざとそば屋のアカウントに上げているんですよ。周りの人に面白がってもらえたので、そば以外のこともメッセージを載せて発信するようになりました。その甲斐あって飲食店さんだけではなく、仙台のヒップホップユニット『GAGLE』のHUNGERさんをはじめとする音楽関係者の皆さんとも繋がることができました。これは偏に、地域の皆さまや多ジャンルの先輩方が応援してくださったお陰です。
ダンスを披露する機会は減りましたが、仕込み終わりに店内で月2回ぐらい踊っています。あとは曲を聞いて「この曲と歌詞いいな、ちょっと踊りたい」と、気分が上がったタイミングで踊り出すこともしばしば。

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-ダンスをしていて、良かったと思うことはありますか?
本当は人見知りであがり症なんですけど、ダンスをはじめたが故に、いろいろ発信できるようになりましたね。現役の時は踊ることしかしてきませんでしたが、そのバックボーンがあることによって、今に活かされています。
そば屋でダンサーなんて、私くらいしかいませんからね。(笑) 誰にでもすぐ覚えてもらえます。
-人見知りで、あがり症には見えません!ダンサーやおそば屋さんというお仕事の楽しさが、若旦那を変えたんですね。
一度ダンスと距離をとってみて、それが私の武器だったことに気がつきました。それにそば屋としての楽しみも少しずつ見い出せたからこそ、今は仕事の話をすることがめっちゃ楽しいです!
私ほど「仕事が楽しい」と思っている社会人は、あまりいないと思いますよ。雑談より、はるかに面白いっすもん!楽しいことを優先した生き方は、人を成長させてくれるんですね。(笑)

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-お知らせ
『登喜和』のおそばは毎朝、そば打ちしています。 そば打ちのモットーは「素材を活かす」こと。そば本来の香りと甘みが最大限に引き立つよう、心がけております。ぜひお近くにお越しの際は、お立ち寄りください! ​​

そば処 登喜和(仙台市太白区泉崎1-33-17)

「営業時間」ランチ11:00-15:00、ディナー(月火金/土日)17:00-21:00
[電話番号]022-246-0124
[URL]https://sobadokorotokiwa.wixsite.com/sobadokoro-tokiwa
[メールアドレス]sobadokoro.tokiwa@gmail.com
※メールでの予約受付は来店日の2日前迄

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