ROUTE286

   

286の人々

第00013話
『NPO法人アートワークショップすんぷちょ』代表 及川 多香子さん

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1984年生まれ。西多賀出身、太白区在住。二児の母。2008年、明治大学文学部演劇学専攻卒。在学中にイギリスの演劇教育を学ぶ。震災後は『公益社団法人助けあいジャパン』のボランティア情報ステーションで、被災地情報を発信。2013年に『NPO法人ボランティアインフォ』副代表、2016年『NPO法人アートワークショップすんぷちょ』代表に就任。2022年7月『アートシェアスタジオ ちゃちゃちゃ』をオープン。「すべての人にアート」をスローガンに、舞台公演ワークショップや子ども・高齢者・障害者施設への出張アートワークショップを展開する。2019年よりPLAY ART!せんだいを共同代表として設立し、演劇教育に取り組んでいる。

[URL]http://sun-pucho.com/

アートは最大の遊び 必要性よりも多様性がつくり出す面白さ

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「とっておき音楽祭」
パフォーマンスクラス出演の様子

-及川さんは東日本大震災を機に、仙台へUターンされたんですよね。
そうですね。震災前までは東京に住んでいて、就職活動も東京の劇場や文化施設を探していました。しかし経験者が優遇されている世界だったため、全く異なる業種で3年間働きました。
退職は震災前から決めていて東京で転職先を探していたのですが、それどころではなくなっていましたね。
4月2日に高速バスで東京から仙台に戻り「何かボランティアしようかな」と『公益社団法人助けあいジャパン』のボランティア活動に参加しました。

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-ボランティア活動では、どんなことをされていたんですか?
被災地のボランティア情報をYahoo!サイトのデータベースに提供する「ボランティア情報ステーション」で、仙台の学生チームとともに、何度も現場取材を行ってボランティア情報を集めて発信しました。
被災地のボランティア団体登録もされてないような小さな団体を紹介するブログ記事などを書いていました。Yahoo!ニュースに取り上げてもらえたりして「自分の記事が、日の目を見るんだ。すごいな」とやりがいを感じました。
それになんといっても、記事を100本ノックみたいに書かなければならなかったので、本当に鍛えられました。(笑)
その後、同年5月『NPO法人ボランティアインフォ』を代表の方たちと立ち上げたのですが、その経験や情報発信のボランティア活動は『すんぷちょ』の法人化や活動に活かすことができています。

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-被災地の取材をされてきた及川さんが、『すんぷちょ』の活動に参加されるようになった理由を教えてください。
『すんぷちょ』の活動に参加したのが2014年なのですが、被災地取材をする中で、やはり文化芸術や演劇教育のことはすごく気になっていたんです。
そんなときに仙台市市民活動サポートセンターで、『すんぷちょ』のチラシに書いてある “すべての人にアートを” というスローガンを見て、「なんとなくいいな」と思ったのがきっかけでした。最初はボランティアで参加して、2016年の法人化を機に私が代表に就きました。
参加当初から、障害のある人もない人も小さい子どもから高齢者まで、さまざまな人と組んでワークショップや舞台公演を行っていました。
それまで過ごしてきた環境や出会う人々とは大きなギャップがあり、興味を持ったので『すんぷちょ』の活動にのめり込んでいったんです。
「ようやく芸術の活動ができる!」と、気合が入っていたのだと思います。

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すいよう子育てひろば

-イギリスの「演劇教育」はどんなものでしたか?
もともと大学に入学した頃は、あんまり演劇に興味があったわけではなく、劇団をされている先輩が多かったので少しずつ興味を持つようになりました。
しかし当時は、舞台作品を完成させては舞台をつくって壊してを繰り返すサイクルが、私の肌に合わず面白みを感じませんでした。
3年生になり文化行政やマネジメントの授業があって、その中でイギリスの演劇教育が紹介されて「すごく面白いな」と思いました。ただ作りたいものを作って上演するっていうだけではなく、演劇的な手法を使って子どもの学びが多様になったり、社会福祉に貢献できるなど、他分野と展開されています。
イギリスは、シェイクスピアが輩出されるほど演劇がとても盛んです。学校の授業にはドラマという必修科目入っていて、演劇が身近なものとして存在します。
例えば、社会の勉強をするために美術館へ行く授業。絵画の前で絵画の本人役として先生がセリフを語りかけ、生徒はそのコミュニケーションの中で美術や社会に触れることができます。どの科目でもそうですが、演劇的な手法を使って他の授業をもっと膨らまして学ぶことができるんです。

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アートシェアスタジオ「ちゃちゃちゃ」

-今、一番力を入れていることは?
日本でも、劇作家の平田オリザさんが大きくテコ入れしてつくられた文化庁のコミュニケーション能力向上事業というものがあります。
全国でどんどん発展してきていますが必修には入っていないため、この事業を知っている個人が申請して学校と組み、アーティストが派遣されるというのが日本の演劇教育の限界になっているように感じます。
実はこの事業は個人だけではなく、学校申請型もあるんです。学校は一切金銭的な負担をしないでアーティストを学校に呼んで、授業することが可能となります。
事務能力がある意識の高い学校はどんどん活用している機会が増えていますが、特に東北は遅れているので2019年より『PLAY ART!せんだい』という新しい団体を立ち上げて、演劇教育の普及・啓発活動に力を入れています。

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スタジオ内観

-スローガンである「すべての人にアートを」を実現するために大切にしていることを教えてください。
やっぱり、必要性よりも面白さ。そこが一番ポイントで、私たちは障害者支援をしているつもりは全くありません。いろんな人たちが、同じ場所に一緒にいる方が面白い!
どんな言葉を並べても、結局本当に大切なことはそれだけで十分なんですよ。

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フラットシアターフェスティバル vol.1

-アートを楽しむとは?
アートは最大の遊びですよね。遊びが嫌いな子どもはいないし、遊びが不必要な子どももいません。全ては遊びからはじまるので、いろんな遊びを体験しましょう!
『すんぷちょ』では人と繋がることがちょっと苦手、難しいという人たちの居場所にもなっています。
人がそれぞれ持っているコミュニティとかネットワークで、「うまくいかない」「ギクシャクしているな」「もうちょっとフラットな関係になりたいな」と思ったときは、『すんぷちょ』がダンスや演劇の手法を使って、人と人が無理なく繋がったり、お互いのことを認め合えるようにするお手伝いができます。ぜひお気軽にご連絡くださいね!

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-団体情報
『NPO法人アートワークショップすんぷちょ』
[住所] 事業所:仙台市太白区八木山弥生町12-3
     スタジオ:仙台市宮城野区原町5-5-35 熊谷ビルB1
[URL] http://sun-pucho.com/

【直近のイベント】
フラットシアターフェスティバル vol.1
日時:2022年9月17日(土)、18日(日)
会場:宮城野区文化センター、宮城野区中央市民センター

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また、今年オープンのアートシェアスタジオ『ちゃちゃちゃ』が入る建物は、もともと「アーティストアパート」と呼ばれていたぐらい、いろんな面白いアーティストたちがアトリエで借りていた場所です。同アパートには世界的にも活躍しているパフォーマンス集団が住んでいたり、宮城野区文化センターや障害者福祉センターが近くにあるので、気軽に遊びにきてください!

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