第0004話
「はり灸 英(はな)」アドバイザー 佐藤 英子さん
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1941年生まれ。宮城県塩竈市出身(名取市在住)。『はり灸 英(はな)』元院長、アドバイザー。1975年、河原町の『小関鍼灸整骨院』(故)初代宮城鍼灸師会会長 小関明先生に師事。最初に『佐藤はり灸院』を1978年に長町3丁目で開業。2001年には宮城野区福田町1丁目に移転して『佐藤英子鍼灸院』を開き、『東洋医学研究所』も併設。東日本大震災により閉業した後、長町1丁目に『はり灸 英』を2013年に開業。
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- 日本の伝統的な鍼灸の経絡治療を中心に行なう『はり灸 英』を開業された英子先生に、鍼灸をはじめられたきっかけや引退されてから行っている活動についてお話いただきました。
- -英子先生は、どうしてこのお仕事をはじめられたのですか?
- 皆さんによく聞かれるのですが、美談ではないのですよ。(笑)年齢差がある方と結婚したものですから「一人になってしまっても、子どもたちを大学に入れたい」という気持ちがあり、最初は美容師の免許を取りました。塩竈の生家で美容院を開業して少し経った頃に、父親が脳血栓で倒れてしまい、後遺症で右半身付随となってしまったのです。そんな父を看て「なんとか改善させたい」という一心で、鍼灸の道に入りました。
『学校法人 赤門宏志学院 赤門鍼灸柔整専門学校』へ昭和50年に入学したのですが、当時の学校では実技演習や教科書が充実していませんでした。各々に先生の技術を見て覚えるしかなかったのですよ。当時の学生は、苦労したはず。私は幸福にもご縁があり『宮城県鍼灸師会』を立ち上げた、小関 明会長の弟子に受け入れていただき「鍼灸の道」に入ることができました。
当時の東北には、しっかりとした専門書や鍼灸術を教わる機関がありませんでした。そのため、日本の伝統的な鍼灸を主とした『経絡治療学会』が東京と熱海で開催していた、学会・講演会や合宿に足繁く通ったものです。移動手段は、新幹線などがまだない時代でしたので、夜行列車の寝台車。
そして熱心な宮城の先生たちが中心となり、この学会が東北支部を立ち上げた際に私も関わらせていただき、東北でも古典に準じた鍼灸の勉強ができる場所をつくりました。
- -東北の鍼灸が発展してきた背景には、英子先生も深く関わっていらしたのですね。
- 私は『学校法人 赤門宏志学院 赤門鍼灸柔整専門学校』と『学校法人 健生学園 東日本医療専門学校』で教鞭をとり、特に学生の臨床部門の提供には工夫しておりました。当時の若い人たちには、東洋医学の基本技術や臨床現場の実技実習の機会がありませんでしたので、『経絡鍼灸学会 東北支部』は非常に貴重な存在。現在は充実した教育環境が整えられてきているようです。
私は鍼灸の奥深さに感動して、夢中で40年ほど続けてきましたので、臨床現場で一番年長者になりました。この鍼灸院は長年手伝ってくれた佐藤 寛崇先生に任せ、今はアドバイザーとして週に何回か臨床に携わっています。
英子先生と佐藤院長(右)
- -後継者に佐藤院長がいらっしゃるのは、心強いですね。お灸の効果なのですが、私たちの身体をどのように整えてくれるのでしょうか?
- お灸効果の根源は「艾(もぐさ)」の火とその温熱の特徴にあります。「艾」は、蓬(よもぎ)の葉の裏毛(繊毛)のこと。
今でこそ火を起こす道具はたくさんありますが、最初は氷のレンズを作り焦点を合わせて、採火(清浄な火を太陽の光から採ること)していました。その火口の火を枯れ草や小枝に移す役割をしていたのが「艾」でした。そのため「艾」で起こした火は、太陽の温熱と同等の価値があるとされ、 生命の源(大自然の太陽「純粋の陽の気」)とされています。
その温熱で病態の体を正常に復活させる「お灸」は、私たち人間(万物)が正しく健康を保つことができる素晴らしいものです。
- -英子先生のお話を伺っていますと、お灸への敬意がひしひしと伝わってきます。
- 李 建民氏の「灸法の起源〈簡介〉」浦山きか先生著(季刊内経2003/夏号NO51)の別刷をいただいて、「艾の温熱がお灸を通じて、人体に感応させる」ということを知りました。その時、震えるほど感動したのを今でも覚えています。
そして小関会長が「私はお灸がなければ、病気を治せません」と、お灸を多用して門戸列をなして患者さんがいらしていたことを身を以て体験しました。
また当院の「艾」は、繊毛と精油が主成分で繊維や夾雑物がないものを使用しております。ほんわかした熱が優しく、煙も少量で芳香性です。手間暇がかかり、昔から「ハーブの女王」とされ何千年前から受け継がれています。
左の艾:『英(はな)』で使用している高級艾
- -英子先生は治療院のアドバイザーをされているほかに、どのような活動をされていますか?
- 「誰もが、自分の家で体の調子を整えられるようになれたらいいな」と思い、そういう療法をたくさんの人と共有する活動を行っています。以前から「仕事を引退したら絶対にやりたい」と、考えていました。
これまでもお灸の講義をしたり様々なことを試していて、最近では『NPO法人おりざの家』で温灸教室を行いました。この教室では「温灸hanaシート」という私が考案した、火傷しないで簡単に体験できるお灸を使いました。
コロナが落ち着いたら再開できたらと思うので、ご興味のある方はぜひお試しくださいませ。
- -鍼灸は、小学生でも受けることができます?
- もちろんです。小児鍼(しょうにばり)というのもあるので、小さなお子さんも治療にいらっしゃいます。お灸も熱くなく、楽しみながら治療できますよ。
車鍼やローラー鍼など基本的に全部、肌にささない鍼で、皮膚に刺激を与えるだけの鍼になっています。子どもや肌が弱い人には、こちらで治療を行っています。お家でも金属のティースプーンでツボに押したり、さすったりするだけで症状が和らぎますので試してみてください。「かんむし」という子どもの神経症をはじめ、寝小便や食欲不振にも効果があります。
また最近の子どもたちは、スマホとかタブレットを使った勉強が増えて、肩こりや目のこりだけではなくて、姿勢が悪くなったりしている人もいると思います。もし悩んでいたら、お母さんとお父さんに相談してみてください。鍼は刺すだけではなく、お灸も自然な温かさのものをご用意しているので、安心して体験できますよ!
小児鍼の針は全て丸みがあります
- -受診のときは、どんなところに気をつけて治療院を探すといいのでしょうか?
- 鍼灸院を選ぶときは、先生の人柄や治療方法などがわからないことが多く、恐らく難しいでしょうね。当院では患者さんの紹介でいらしていただく方がほとんどです。一人一人、誠心誠意の対応をしております。
近年、新型コロナウイルスの蔓延や地震の多発、戦争の勃発など多難な時代になっております。皆さんそれぞれに、健康の自衛策をお持ちのことと思われますが、その中に「鍼灸」もどうぞ取り入れて健康維持にお役立てくださいませ。
家族のような掛け合いが、とても温かいお二人
- -お知らせ
- 『はり灸 英』では、体全体をアップさせる「養生鍼灸」と不調なところの「患部治療」。そしてそれを継ぐ、つぼ治療の「経絡治療」の三本柱で、丁寧に全身を診て治療しています。患者さん一人一人の身体に合わせたオーダーメイドの治療ができますので、まずはお気軽にお問い合わせくださいね。
『はり灸 英 -hana-』
仙台市太白区長町1丁目5-6 aiビル3F
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2022年5月14日より移転・院名変更
『佐藤はり灸院』
仙台市太白区長町1丁目12-14 コウジイコート101
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