ROUTE286

ホヤパイが行く

このコーナーでは、286ライターの
HOYAPAI(ホヤパイ)が
気になる太白区の
スポット・人・物をご紹介します!

HOYAPAI

太白区在住の太田和美
(美術家・パフォーマー)が
展開しているアート作品。
三陸の海の幸「ほや」と豊穣と象徴
「乳房」をオマージした造形で、
頭に被ったり
空間に飾ることができます。
「出会うだけで幸せになる」
という都市伝説を伝播中。

#08
自然の恩恵を余さずいただく 大年寺発祥の郷土料理『おくずかけ』
朝日がのんびりと顔を出し、風にのって漂う金木犀の香りで秋の深まりを感じる今日この頃。今年も残すところ、あと2ヶ月。師走に向けて気持ちがそわそわしてくる時期になりました。
さて、8月9月はお盆・お彼岸でしたが、みなさんはご家族やご先祖さまとゆっくり過ごすことはできましたか?
私は大好きな『おくずかけ』を食べながら、のんびりすることができました。仙台の方にはお馴染みの『おくずかけ』。実はその発祥とされているのが、太白区門前町にある黄檗宗寺院(おうばくしゅうじいん)の両足山 大年寺(以下、大年寺)なんです!

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-『おくずかけ』の由来とされる大年寺はどんなお寺?
それではここで、HOYAPAIと少し歴史のお勉強です。(笑)
伊達綱村公(第四代藩主)が1696年に建立した大年寺。仙台藩が定めた寺格の中で最も高い「御一門格 (※1)」を与えられ、日本三叢林(さんそうりん)と称されるほど大規模な寺院でした。
綱村公は、黄檗宗僧侶の鐡牛道機(てつぎゅうどうき)に宗教上の弟子入りをした義父(稲葉正則/江戸幕府老中)の影響を受けて、黄檗宗に帰依するようになったとされています。
綱村公の建立から江戸時代にかけて庇護されてきた大年寺でしたが、明治維新以後の政情の動揺により庇護者を失い、頽廃しました。現在では、吉村公(第五代藩主)が建立した惣門と石段が面影を残すのみ。惣門からは閖上港を望むことができ、当時の仙台藩主がそれをご覧になったことで「閖」という漢字が誕生したというエピソードもあります。

(※1)伊達政宗公がつくった仙台藩の家格で、最も公的な存在。

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大年寺惣門と石段(仙台市指定文化財)

-中国の伝統文化を受け継ぐ黄檗宗
黄檗宗は、中国僧の隠元隆琦(いんげんりゅうき/以下、隠元禅師)によって伝えられた禅宗で、その大本山は1661年に開創された「萬福寺」(京都府宇治市)で、中国的な特徴を色濃く残しています。
なんでも、江戸初期〜中頃の住職はほとんど中国から渡来した僧侶だったそうで、今日の中国寺院と共通する仏教儀礼が執り行われています。
また隠元禅師が伝えたものの一つに、仏事や法要のあとにもてなされる中国の精進料理『普茶料理(ふちゃりょうり)』があります。
普茶とは、「普く(あまねく)大衆と茶を供にする」という意味で、すべての人びとが中国文化と日本の自然が育んだ産物を佛恩(ぶつおん)に応え報いるための料理。

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黄檗宗大本山「萬福寺」

-仏の恵を和気藹藹と会食する『普茶料理』
普茶料理の献立は8つ。そのうちの一つに『雲片(うんぺん)』という葛煮があり、それをつくる際に残った野菜で修行僧たちが葛汁にして食べていたものこそ、のちに郷土料理として親しまれる『おくずかけ』になったというわけです!
こんな時代背景があったなんてビックリですよ。ほんとに。(笑)
普茶の作法は「上下の隔たりなく一卓に座り、和気藹藹(わきあいあい)のうちに料理を残さず食す」こと。
少し意味合いは違うけど、法事やお盆などで親戚が集まったときに「今日は無礼講!」と、お酒を片手に場を盛り上げてくれた親戚の宴会おじさんを思い出しました。(笑)
日本三禅宗(臨済宗/曹洞宗/黄檗宗)では、「五観の偈(ごかんのげ)」という食事の前に唱えられる偈文があり、食事をいただくことも修行とされています。

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普茶料理の一部

-日本伝統食である『自然食』のススメ
昨今の食文化はとても豊かである一方、丁寧な食事を忘れてしまっている気がします。私も忙しさにかまけて、インスタントで食事を済ませてしまうこともしばしば。
私たち人間の身体は食べ物をはじめ、さまざまなものを環境から取り入れています。環境に馴染み健康な暮らしをするためには、その土地や季節に合った食べ物を摂ることが大切です。
これを機会に、伝統的な日本の食生活の在り方を再認識しませんか?

一物全体食(いちぶつぜんたいしょく)
食物は全体でひとつの命。それを丸ごと余すところなくいただきましょう!
身土不二(しんどふに)
日本伝統食の基本「身体(身)と環境(土)は切り離せない(不二)」。足で歩ける身近なところで育ったものを食べて、生活しよう!

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-情報提供
NPO法人おりざの家(仙台市太白区長町1-12-14)
[URL] https://www.orizanoie.com/


(※1) 『宮城県史』復刻版第2巻67-70頁、齋藤鋭雄「仙台藩家臣団の成立と編成」213-214頁・219頁

参考文献
(1)両足山 大年寺HP
(2)黄檗宗大本山 萬福寺 HP
(3)瑞鳳殿HP 学芸員ブログ(四代藩主綱村公と黄檗宗 京都葉室山浄住寺「方丈」 2019.11.17より)
-次回予告
次回は、太白山のふもとにある『太白山自然観察の森 自然観察センター』をご紹介!